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認知症の家族が薬を飲まないときの対策|実際に試した服薬管理の工夫

認知症の家族が薬を飲まないときの対策|実際に試した服薬管理の工夫

この記事は、認知症だった母・鮨子の介護経験をもとに、家族が実際に行った服薬管理と、現在の公的情報を踏まえてまとめた実用ガイドです。薬の種類や病状によって適切な対応は異なりますので、処方内容の変更や飲み忘れ時の対応は、自己判断せず医師・薬剤師へ確認してください。

認知症の家族が、処方された薬を飲んでくれない。

わが家でも、母・鮨子の認知症が進み始めた頃、この問題に悩みました。薬そのものを嫌がっていたというより、母は「自分はまだ薬を飲まなくても大丈夫」と考えていたのです。

「私はまだ飲まなくて大丈夫よ」

母はもともと身体が丈夫な方で、風邪をひいても薬を飲まず、早く寝て自分で治してきた経験がありました。その感覚が残っていたことも、「今の自分に薬は必要ない」という受け止め方につながっていたのかもしれません。

しかし、医師から処方された薬を本人の判断だけで飲んだり飲まなかったりする状態を、そのままにするわけにもいきません。そこで、お薬カレンダー、電話での確認、家族による服薬管理などを一つずつ試しました。

当時の詳しい記録

母が「まだ飲まなくて大丈夫」と薬を飲まず、家族が服薬確認を始めた当時の出来事は、体験記として別の記事に残しています。

【認知症初期の記録⑦】「私はまだ飲まなくて大丈夫」と薬を飲まない母

「薬を飲まない」は、単なる飲み忘れとは限らない

家族から見ると、薬を飲んでいなければすべて「飲み忘れ」に見えてしまいます。しかし、実際には理由がいくつか考えられます。

  • 薬を飲むこと自体を忘れている
  • 飲んだことを忘れ、もう一度飲もうとする
  • 自分には薬が必要ないと思っている
  • 薬の目的を理解できなくなっている
  • 薬の種類や服用時間が多く、管理しきれない
  • 錠剤を飲み込みにくい、包装を開けにくい
  • 飲んだ後の体調変化が嫌で、本人なりの理由で避けている

母の場合は、「薬を飲む予定を忘れる」ことと、「自分にはまだ必要ないと考える」ことの両方がありました。

そのため、単に薬を目の前へ置くだけでは解決しませんでした。

実際に試した対策① 週間のお薬カレンダーを壁に掛けた

最初に試したのは、曜日と朝・昼・夜などに分けて薬を入れられる、壁掛け式のお薬カレンダーでした。

「今日の場所を見れば、飲む薬が分かる」という状態にしておけば、一人でも管理できるのではないかと考えました。

ところが、母には十分な効果がありませんでした。

薬が目に入っても、「これは今日飲むものだ」と行動へ結びつかないことがあります。さらに、薬を飲む必要性そのものを感じていないと、カレンダーに薬が残っていても、そのままになってしまいます。

お薬カレンダーは今でも有力な服薬支援の一つですが、本人の状態によっては、置くだけ・貼るだけでは管理できない場合があります。

実際に試した対策② 電話で服薬を確認した

母の場合、電話で説明すると、その場では納得して薬を飲んでくれました。

そこで時間の許す範囲で、服薬する時間帯に電話を入れるようにしました。

「薬の時間だよ」

「今日の分を見てみよう」

「今、飲めそう?」

「どうして飲まなかったの」「昨日も言ったでしょう」と責めるよりも、その時にすることだけを短く伝える方が、母には分かりやすかったように思います。

ただし、電話にも限界があります。「飲んだよ」と返事をしても、本当に服用したところを家族が目で確認できるわけではありません。

また、毎日決まった時間に家族が電話を入れ続けること自体が、大きな負担になります。

実際に試した対策③ 夕食後の薬は、そばにいる人へお願いした

母が一人では薬を飲まなくなったため、夕食後の服薬については、母の事実婚のパートナーであるGさんにも管理をお願いしました。

本人の近くにいる人が、「今が薬の時間」と声をかけ、その場で確認できれば、離れた家族が電話だけで管理するより確実です。

一方で、服薬管理を家族やパートナーへお願いするには、認知症や薬に対する理解を共有しておく必要があります。母の場合は、この部分が十分にうまくいかず、家族間で認識の違いもありました。

「誰か近くにいるから、その人に任せれば大丈夫」とは限りません。誰が、いつ、何を確認するのかを具体的に決める必要がありました。

強く説得するより、短く分かりやすく伝える

「この薬を飲まないと病気が進む」「先生から言われたでしょう」と長く説明しても、情報量が多くなるほど母には伝わりにくくなりました。

また、「なんで飲まないの」と強く言えば、その瞬間は飲んでもらえても、家族とのやり取りそのものが嫌になってしまう可能性があります。

認知症の方へ薬の説明をする際は、一度に多くの情報を伝えず、本人の反応を見ながら、ゆっくり・簡潔に伝えることが基本になります。

「今日は火曜日だから、ここの薬だよ」

「夕食が終わったから、今飲もうか」

「先生から出ている、いつもの薬だよ」

本人が「薬を飲まされている」と感じるより、「いつもの生活の流れの中で飲む」形を作れる方が、家族にとっても負担が少なくなります。

今なら検討したい対策① 一包化と日付表示を薬剤師へ相談する

複数の薬を服用している場合は、薬局へ一包化を相談できる場合があります。一包化とは、同じ服用時点の薬を一つの袋にまとめる方法です。

さらに分包紙へ「8月8日 夕食後」などの日付や服用時点を表示できれば、家族が確認するときにも分かりやすくなります。

ただし、一包化がすべての人に適しているわけではありません。薬によっては一包化に向かないものもあり、一包化したから飲み忘れがなくなるわけでもありません。

本人の薬の種類や管理能力を薬剤師に伝えたうえで、どの形が扱いやすいかを一緒に考えてもらう方法がよいと思います。

今なら検討したい対策② 服用回数や時間を簡単にできないか相談する

朝・昼・夕・寝る前など、服用時間が複雑になるほど、本人だけでなく家族も管理しにくくなります。

薬の種類によっては変更できませんが、医師・薬剤師の判断で、服用回数や時間帯を整理できる場合があります。

例えば、家族が毎日確認できる時間帯に合わせられないか、同じ時間に飲める薬をまとめられないかなどを相談する方法があります。

薬を飲む回数や時間は、家族の判断で変更してはいけません。「夕方なら家族が確認できます」など生活状況を医師・薬剤師へ伝え、処方上可能かを相談してください。

今なら検討したい対策③ 薬局を一つにまとめる

複数の病院へ通っていると、それぞれから薬が処方され、家族も全体像を把握しにくくなります。

可能であれば利用する薬局を決め、お薬手帳も一つにまとめると、服用中の薬、飲み合わせ、残薬などを薬剤師へ相談しやすくなります。

「薬が大量に残っている」「どの薬を飲んだか分からない」「本人が包装を開けられない」といった生活上の困りごとも、薬局へ伝えて構いません。

処方箋どおりに薬を受け取るだけでなく、「家では実際に飲めていない」という情報を医療者へ伝えることが重要です。

今なら検討したい対策④ 家族だけで管理できなくなったら支援を増やす

毎日家族が服薬時間に電話し、飲んだかどうか確認し続ける生活には限界があります。

本人の状態によっては、家族だけでなく、訪問看護、訪問介護、薬剤師による在宅での支援などを含めて服薬管理を相談できる場合があります。

利用できるサービスや条件は人によって異なりますので、ケアマネジャー、地域包括支援センター、かかりつけ医、薬局などへ、「一人では薬を管理できなくなっている」と具体的に伝えることが第一歩です。

薬を飲んだか分からなくなったときが特に危ない

飲み忘れだけでなく、「飲んだことを忘れて、もう一度飲む」ことにも注意が必要です。

家族が電話をしたときに、本人が「飲んだかどうか分からない」と答える場合、確認できないまま追加でもう一回飲ませるのは危険です。

薬によって飲み忘れ時の対応は異なるため、薬袋、患者向けの説明書などを確認し、不明な場合は薬剤師や処方した医療機関へ相談します。

重要

飲み忘れたからといって、自己判断で次の時間に2回分をまとめて飲まないでください。また、薬を勝手に減らす、中止する、砕く、別の時間へ変更するといった対応も避け、薬ごとの指示を医師・薬剤師へ確認してください。

家族側で簡単な服薬記録を残す

電話や複数の家族で服薬を確認する場合は、「誰が確認したか分からない」という問題も起こります。

そこで、紙や家族間の共有ツールなどで、簡単な記録を残しておくと確認しやすくなります。

日付 確認者・メモ
8月8日 電話で確認
8月9日 未確認 夕方は薬局へ相談

大切なのは、完璧な記録表を作ることではありません。「飲んだか分からない状態」を少しでも減らすための仕組みにすることです。

こんなときは医師・薬剤師へ相談する

  • 薬を飲まない日が繰り返される
  • 薬を飲んだかどうか本人も家族も分からない
  • 二重に飲んでいる可能性がある
  • 薬を飲むと体調が悪くなると本人が訴える
  • 錠剤を飲み込みにくそうにしている
  • 薬の袋やシートを自分で開けられなくなった
  • 複数の病院から多くの薬が出ており、管理できない
  • 家族による毎日の服薬確認が負担になっている

特に、本人が薬を拒否している理由に副作用や飲み込みにくさが関係している可能性がある場合は、「認知症だから嫌がっている」と決めつけず、医療者へ状況を伝えます。

本人が飲めないのであれば、現在の処方が本人の生活に合っているのかを見直すことも医療者の役割です。

「自分で飲める」にこだわりすぎない

母の服薬を管理し始めた頃、私は「何とか一人でも薬を飲める仕組みを作りたい」と考えていました。

そのためにお薬カレンダーを使い、説明を書き、電話でも確認しました。

しかし、認知症の状態が変化していけば、それまで使えていた方法が急に使えなくなることがあります。

カレンダーで管理できなくなったら、電話で確認する。電話だけでは難しくなったら、そばにいる人が確認する。それでも難しくなったら、医療・介護の支援を増やす。

本人の能力を奪わないことは大切ですが、「一人でできること」にこだわり続け、飲み忘れや重複服用の危険を増やしてしまっては本末転倒です。

本人のできることを残しながら、できなくなった部分だけを周囲が補う。母の服薬管理では、その線引きを何度も見直す必要がありました。

私たちの経験から感じたこと

母が「薬を飲まない」とき、最初は「言えば分かる」「カレンダーを見ればできる」と考えていました。

しかし、薬の必要性を説明したこと自体を忘れたり、服用するという行動へつながらなくなったりすると、本人の努力だけでは解決できません。

また、家族が毎回強く言い聞かせれば解決するわけでもありません。

母には、その時その時に分かりやすく伝えること。そして家族側は、本人が失敗しにくい環境を作ること。さらに難しくなれば、医師、薬剤師、介護職などへ管理を広げていくことが必要でした。

「薬を飲ませること」だけを目標にするのではなく、本人と家族が無理なく続けられる方法を探すことが、服薬管理では大切なのだと思います。

この記事について

この記事は、認知症だった母と家族の経験をもとにした一般的な情報です。薬の飲み方、服用時間、中止・変更、飲み忘れ時の対応は薬によって異なります。個別の薬については、必ず処方した医師または薬剤師へご確認ください。

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参考情報

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